避難所巡回時代十二回目 2011/7/9

過去の記録から転載します。
7月9日(土曜日)、東日本大震災および津波の被災地である岩手県宮古市と山田町を訪問し、避難所で生活する方たちへ音楽療法を実施してきました。研修生一人が同行しました。
宮古市 10:30-11:30 宮古市小学校
体育館の受付にいた自治労の方に聞くと、派遣されて駐在するのは今日で最後だということでした。子供たちの姿はありましたが、やはり多くの大人たちは不在でした。
歌には参加しませんが、いつもいて声をかけてくれるTさんという方が、寝ていたAさんに「ほら、友達が来たよ」と言っておこしてくださいました。Aさんは「ああ、待ってましたよ。これが楽しみでね」と言って用意した座席まで歩いてきました。起きぬけだったので、歩行がより不安定でしたが、着席をして元気に活動を始めました。
ノートPCで「ひまわり」「夜空のトランペット」を聞いたあと、これは展覧会の絵に似ているね、などの感想が出ました。他に数曲ほどリクエストをした後、ダジャレを言ったり亡き親友の想い出を語ったり、いつにまして雄弁でした。
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先週、指輪をなくしたと言っていたFさんは今日は机でずっと書類を書いていて不参加でした。Dさん夫妻は不在でしたので、研修生の書いた記事コピー(音楽之友社「Theミュージックセラピー」)を居場所においてきました。帰り際、校門付近でCさんにお会いしたので、研修生から歌詞をお渡ししました。
 
山田町 14:00-15:00 はまなす学園
入口付近で車をゆっくり走行しているときに、いつも無愛想な顔をしている女性とたまたま出会い窓をあけて話しかけたら近寄ってきて立ち話を始めてしまい、研修生に言って連れていってもらいました。
中ではまだおやつを配布していなかったので、開始時間が少々遅れて開始になりました。毎回、明朗に歌をリクエストしてくる女性が二人とも私の横に並んでいたので、非常に賑やかでしたが、キーボードにこだわりのある男性が何度もしつこくやってきて、どこかへ持っていこうと手を伸ばすので気をぬけませんでした。
いつもの活動場所は室温が高く、汗をかいている人も多かったのですが、歌の場面になると大きな声を出して元気に歌っていました。窓からは海辺から吹く生臭い風が入ってきて、大きな蝿が飛び回っている環境の悪さでした。
リクエストは、今まであまり出さなかった男性から多くの曲がよせられました。また、ピンクレディの曲では大勢の女性が立ちあがって踊りを踊りました。
いつもは全く目立たない男性が、この日は何曲もリクエストをして、満足そうな顔をしていたのが印象的でした。
山田町 19:00-20:00 豊間根中学校
3回目の訪問ですっかり顔なじみの方が増えて、施設に入るとあちこちから挨拶をされたり、今日は何をするのかと話しかけられました。テーブルといすを自治労のスタッフが用意してくれていて、あとは自分たちで参加者の椅子を用意しようとしたら、それも自治労や参加者が手伝ってくれました。
これほど親密に接してくれる方がいる場所ですが、それでもやはりこちらには一瞥もくれずに黙々と自分の居住スペースで新聞や本を読む男性が数名いて、彼らに対して研修生が音を出すことに関しての許諾をとりに声かけをしました。これらの方々は、これまでも全然参加をせずにいた方々でした。
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もしかしたら今夜が最後の訪問なのかな、この人たちはもう最後までご参加いただけないのかな‥とちょっとブルーになりつつ表面上は笑顔を絶やさずにいつも通り明るく楽しいセッションを心がけました。研修生も頑張りました。
「あの」
終わったあと、参加して下さった方のお一人が声をかけてきました。
「はい?」
「良かったら握手を」
差し出された右手に、うっかり左手を出す私。
(ぎっちょなので)
つーか、嬉しい!ありがとうございます!!
「写真いっしょにとってください」
「今までありがとうございました」
「楽しかったです」
次々と皆さんが我々のところに来て、声をかけてくれました。
ああ、報われました。泣きそうでした。
毎週、色々なことがあったけど、山田町の皆さんと一緒に歌が歌えて良かったです。
この後、皆さんがどう過ごしているのかは知る術がありませんが、きっと幸せでいてくれると信じています。避難所時代の日々で我々が訪問したことなど忘れていても、新しい一歩を踏み出して下さっていれば、とてもうれしいです。

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About K.Chida

東日本大震災の被災地となった三陸沿岸で暮らす人々を対象に、音楽療法による支援を行っている岩手県在住の音楽療法士です。2013年2月に一般社団法人東北音楽療法推進プロジェクトを設立しました

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