世間ではシルバーウイークという名の大型連休でしたが、私はこれまで隔年のペースで担当してきた岩手大学教育学部の講義を(昨年度からまだ一年しか経っていませんが諸事情により)実施してきました。まあ、諸事情というのは音楽療法の講義が今回で最後(の予定)だからです。2003年に開始したので、もう12年にもなるのですね‥当時の学生さんは既に30歳を過ぎて立派な社会人になっているのでしょうね。
3号館と呼ばれていた頃はニカワ臭い古びた建物でしたが、昨年改築してすっかり小奇麗になっておりました。連休中だから閑散としておりましたが、木々が鬱蒼と繁っている環境はとても好きでした。
さて、今回の履修生は20余名。そのうち数名が現れませんでしたが、昨年度が4名だったので大幅増です。多忙な毎日だったので特に準備も何もしていないまま、場当たりで三日間すすめることにしました。
21日(月)
1.学生による自己紹介(出身地、専攻、最初に買ったCDなど)
2.グループ分け(10万円あったら音楽、食べ物、ファッションのうちどれに使うか?の回答別で)
3.他人の似顔絵描き
4.他人に向けた想像(小さいころのニックネーム、好物、ペットの名前など勝手に推察)
5.自分に関する記述(三色のポストイットに)長所、短所、将来の展望
6.リーダーを決めて、一人ひとりが上記に関することをプレゼン。お互いに意見交換
7.話し合いの中で浮かび上がってきたキーワードをポストイットにたくさん書き出す
8.キーワードを眺めて、ざっくりとグループのテーマを決める
昼休み
9.「31ゲーム」
10.歌詞かるたでテーマにそった作詞の作業を開始
11.出来上がったフレーズをポスト・イットに書いて壁に貼りだす
12.フレーズを構成
13.グループごとに発表
教育学部の中でも色んな専攻があり、同じ学年でも話をしたことが無い相手が大勢いたとのこと。まずは三日間同じグループで作業をするので、お互いを知り結束してもらうための場作りに時間をかけました。出来上がった歌詞には曲をつける予定でしたが、思ったより学生の皆さんがじっくりと吟味しながら作業をしていたので、時間切れとなりました。ここには紹介できませんが、面白い歌詞ばかりでしたよ。
二日目
1.「おじいちゃん、おばあちゃんが好きそうな曲20」を想像しながら曲名をポストイットに書く
2.グループ内でお互いの書きだした曲を確認しあい、共有
3.3つのグループごとに曲名を発表、自分のグループが独自に出した曲名に絞る
4.独自の曲を講師が講評(高齢者領域で認知度が高いかどうか、使用頻度が高いかどうか)
5.20曲のスタンダードをグループで選定(第1次)
6.歌集、楽譜集、資料を配付。これらを見ながら新たな5曲を調査し追加する(第2次)
7.足りなかったので3曲追加(第3次)
8.これら懐メロに平成の流行歌から「俺達の時代の曲」として高齢者に紹介する歌を2曲追加
昼休み
9.「昭和ニュース映画」のDVD。を上映
10.ファッション(昭和30年代)のスライド上映
11.昭和と平成のランキング(PowerPoint)上映
12.三陸ことばと合併前の岩手県地図‥以上の資料から、高齢者の青春時代の様子を知る
休憩
13.グループごとに「高齢者施設へ慰問」を想定して、活動内の手遊びと歌の組み合わせを考える
14.グループごとに発表
15.お互いの良いところ、悪いところを考えてシェア
上にある「スリラー」と書いた紙ですが、祖父母世代の高齢者にはマイケル・ジャクソンがいいんじゃないのかしら?と真剣に応えた学生がいて、あらゆる意味で衝撃的でした‥マイケル、いつの時代の人だと思っていたんだろう?面白いなあ。
三日目
1.円になってボディパーカッション、リーダーを順番につとめる
2.三人組で、自分の考えたリズムで合奏する(365歩のマーチ)
3.簡単な有酸素運動とペアストレッチ
4.グループに戻って「サザエさん」に合わせた保育園でのお遊戯を考案
5.療育キャンプでのスヌーズレンの様子を見せる
6.児童領域における音楽療法の意義「表現を促す」「五感を使う」「発達につながる」の説明
7.楽器争奪(?)イントロ当てクイズ
8.児童領域の活動「あそびにきたのはだれかしら」「わたしをさがしてね」紹介
9.「ものがたりの感じられる」読み聞かせと音楽を融合した活動をグループごとに考える
昼休み
10.引き続き活動作り
11.グループごとに発表会
12.撮影したVTRを見ながら問題点や感想をシェアリング
13.緩和ケアの音楽療法DVD鑑賞
14.「臨終の際に聞きたい音楽8曲」を書く
15.書いた歌の紙を学生同士で「私の大事な音楽をプレゼント」と交換
16.「三日間で学んだこと」「自由に感想」レポート提出で終了
提出されたレポートの大半に
「三日間の集中講義なので、ずっと音楽療法に関する講義を座りながら延々と聞かされるんじゃないかと覚悟していたけど、遊び感覚で参加できたのであっという間でした」
とありました。本当はみんなが戦々恐々としていたような座学で三日間やれば、本当に充実した学術的な講義になったんだと思いますが、担当者が私のようなおちゃらけた人間だったのが運の尽き‥何かの不幸だと思って諦めてもらうしかありません。でもまあ、無い袖は振れないので。実力以上のことは出来ません。
東日本大震災の被災地で実施した活動の紹介は本当は迷いました。事前に学生全員から被災地出身かどうか、PTSDになるような被災体験は無いかどうかしつこく聞いて、誰も該当者がいないことを確認してからお見せしたのですが、レポートには実は祖母の家が‥などの記述があり。でも、その学生さんは被災地で音楽を使うことの意義や大切さを訥々と感想として書いてくれて、やってよかったなあ‥と有難く思いました。
これから先、大学で非常勤講師として音楽療法の話をする機会が訪れるのかどうかは定かではありませんが、学生との語らいや交流は私にとってとても意義深い体験だったので、その日に備えて少しずつ語るべきことや伝えたい教えを増やして行こうと思います。
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