ペンタトニック

被災地支援の音楽療法を開始したのは2011年4月でした。最初の4カ月は宮古市と山田町の避難所を巡回する傍ら、空いた時間には福祉施設の入所者を対象に音楽療法を行いました。彼らは知的障がいを抱えた成人でした。
歌唱の他はダンスやゲームを取り入れましたが、楽器演奏もとても喜ばれました。
楽器は簡単に演奏できる打楽器の他、音階ごとに分かれたものを選びました。例えば、ミュージックベル。そしてトーンチャイム。音つみき。
これらは、我々音楽療法士にとっては馴染みが深く、使い勝手の良い楽器です。
まず一音つず対象者に渡すことが出来るので、こちらの指揮でいかようにも演奏形態をアレンジできます。
例えば、コード奏。
「ドミソ」主和音を1グループに渡します。
「ソシレ」属和音を2グループに渡します。
「ファラド」下属和音を3グループに渡します。
曲の進行に沿って、グループごとに指揮をして演奏してもらうと、楽器演奏自体が初めての参加者にも(一切練習なしで)簡単に演奏できます。
例えば、カウンターメロディと呼ばれる対旋律の演奏。
曲の主旋律ではなく、それを支えるベース音や別のメロディを参加者に演奏してもらいます。最も簡単なのは、クリシェ進行と呼ばれる連続して隣り合わせの音階を鳴らす方法ですが、これは説明すると長いので興味のある方は調べてみてください。
最後に、歌の旋律そのものを参加者に演奏してもらう手法ですが、難しいメロディを一音一音渡して、数名の初心者にいきなり演奏させるのは至難の業です。そこで、ピアノの黒鍵(5音)で構成された比較的容易なメロディの曲を選びます。
5音で構成されたメロディは「ペンタトニック」と呼ばれます。
わらべうたや童謡に多いのですが、探せば懐メロにも結構このペンタトニックが見られます。
仮設で人気の曲では下記のラインナップです。
「雨ふりお月」
「夕焼け小焼け」
「赤とんぼ」
「満州娘」
「落葉しぐれ」
「お富さん」
「港町十三番地」
「一週間に十日来い」
「アンコ椿は恋の花」
これら全部、ピアノの黒鍵だけで演奏できますが、相手によって難易度を選択する必要があります。いくらペンタトニックが簡単だと言っても、童謡唱歌ばかりでは「子供の活動みたい」と思われて敬遠されることもあるので、大人の楽曲を用意しておく必要があると思います。
主旋律を演奏してもらいながら、例えばセラピストが大人っぽい伴奏をしたり、他のグループにコード奏を担当してもらうなどの複合技を企画すると、とても盛り上がります。

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