散る別れこそ

「智田さん、せっかく春に奈良へいらっしゃるのだから、講習会の翌日は松井先生と一緒に吉野へ桜を見にいきませんか」

お誘いを受けた数ヶ月前は軽い気持ちで「はーい」と返事してしまったのですが、この時期に吉野山へと出かけるのがどれほどの意味を持っているのか、私は身を持って体験してきましたのでここにご報告いたします。

当日は朝7時に宿を出て、橿原神宮前という駅から特急に乗って吉野駅まで向かいました。電車の中はトレッキングの格好をした本気の人々ばかりでしたが、私はといえば「講師モード」の格好だったので、背広と革靴という山登りには全く向かない状態でした。バスのりばに向かう道中、ヘラヘラしながら彼氏の腕にぶらさがって歩くきまぐれレディたち(中島みゆき)の高いヒール靴よりはマシ、と自分に言い聞かせて中千本までバスでのぼります。バスの車中ではアナウンスで「楠木正成が息子、正行が…」と説明していて、これは音楽療法で良く使う唱歌「青葉茂れる桜井の」の内容だ!と一人で興奮していました。

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誘導係をしていたおじさんがガン黒でジェームス・ブラウン激似だったため、夢中でシャッターを切る私。これから桜の名所へ行くというのに、iPhoneのバッテリーを豪快に使いきり、後ほど激しく後悔することになりました。30分ほど並んでから二本目のバスに乗り込み、さらに上を目指します。途中の道が崩落していていましたが、小学二年生の時に叔父の結婚式で台湾旅行した際に断崖絶壁を躊躇なく高速で通り抜けるバスの窓際で怖い思いをした私はこれくらいはへっちゃらぴーでした。悲鳴はあげましたけど。

吉野水分神社に到着。背後にいたインド人青年が参拝の時に困っていたので、五円玉なげてこうやって参拝するんですよ、と親切に教えてあげたのは良かったのですが、教えた張本人が柏手とお辞儀の順番を間違えてしまいました。今後、ムンバイで間違った神社の作法が広まったら私のせいです。

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てくてく坂道を降りていくと、眼前には見事な絶景が。

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この画像は私が撮影した唯一の風景写真ですが、あまり雄大な自然を撮影することに興味が無いのが良く伝わってくるつまんない写真ですいません。肉眼で見てこそ、です。

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お昼ごはんは窓際から素晴らしい景色を眺めることができる食堂で、うどん定食をいただきました。前日の朝に大阪は鶴橋の駅構内で食べたうどんとはまた違った感じでした。柿の葉寿司、LOVE!

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ご一緒した皆さん、シルエットでご登場願います。左にいる高橋先生は養護学校のベテラン教師ですが、この吉野山を子ども背負って登ったタフガイです。すごい!!

その後、吉水神社では源義経や後醍醐天皇、太閤秀吉に関する調度品などを拝観。一緒にいた先生と「弁慶、意外と小さかったのかねえ」と鎧のサイズを見て話していました。邪気払いどころで九字真法を試みるパワースポット目当ての皆さんの姿も、見ものでした。

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普段、めったに観光地へ足を運ばず、まして土産物を買う習慣の無い私ですが、Twitterで親切な方が「おみやげにいいですよ」と教えてくださった陀羅尼助丸という胃腸薬は買いました。アシスタントなすちゃんがしょっちゅう腹を下しているんですよ、これでしばらくは安泰です。つーかガマのオブジェ怖!!その後、勢いがついて吉野葛で作られた葛餅と葛饅頭も購入しました。夏休みの原宿竹下通り並の混雑でしたが、我々は山道を二時間ほど下ってきた影響が膝やふくらはぎにたまりはじめ、早いとこ下にたどり着きたい…という思いでいっぱいでした。

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この吉野山、秋には紅葉の名所となり、再び賑わうのだそうです。その時期にまた来てみたいです。

吉野駅に到着して美味しいさくらソフトクリームを食べ、電車に乗り込もうという時に高橋先生が切符を持ってうろうろし始めました。何事かと思ったら、今日ご一緒できなかった松井先生ともうひとりの帰りの指定券を、道行く誰かに売りつけようとしていたのだそうです。この時期、この指定券はプラチナチケット。誰かきっと飛びつくだろう、と期待して回ってましたが…難航していました。あきらめてホームへと移動したら、目の前にいた若いドイツ人カップルが特急に乗りたそうにしていたので、声をかけてみたところ予感的中。商談が成立しました。旅先ではこういうハプニングもあって面白いですね。

先生方とは出発点の橿原神宮前でお別れをして、私は近鉄あべの橋駅へ向かいました。JR天王寺から「はるか」に乗ると関西空港につくよ、と教えられたのですが指定券を買う場所がわからず、適当に乗った準急が今度は別の駅で切り離しになり…と、帰り道は散々でした。仙台空港から高速で2時間かけて、盛岡の自宅にたどりついたのは10時半…長旅でしたが、とても貴重な体験が出来ました。奈良の先生方、本当にありがとうございました。とりあえずふくらはぎには膏薬をはっております。

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