音楽による被災地支援を考えている人々へ・音による支え

仮設住宅を訪れる各種支援団体の中には、被災者の皆さんと一緒に歌を歌う活動をしているところがあります。広く知られている童謡や、年代を越えて愛されている愛唱歌の歌詞を参加者に配布し、時にはアカペラで、時にはギターなどの伴奏付きで合唱しています。
普段、大きな声を張り上げて歌う機会が少ない皆さんにとって、大勢で集まり歌を歌う機会は発散の場でもあり、他者との交流の場でもあるので、どんどん広がっていってほしいと私も思っております。
もしこれから、被災地で音楽の活動をしてみたい!と思っている皆さん。僭越ながら、私がこれまで感じてきた「こうすればもっと充実した歌の時間になるかもしんない!」というポイントをいくつか記してみたいと思います。
良かったら参考にしてみてください。
支援者が一番大きな声で歌うこと
「では歌ってみましょう、さんはい」と掛け声だけかけて、あとは相手にだけ歌ってもらおう!と思っても、恥ずかしがり屋の多い三陸ではなかなか歌声は発せられません。私は歌は歌えないから、あんた歌いなさいよ!とは私もあちこちで言われました。支援に入った我々が率先して歌えば、自然と皆さんも声を出してくれます。注意すべき点は、参加者の声が出始めたら、ちょっとずつ声を絞り、皆さんが自分で出している自分の声に気付くように調整したほうが「歌った」実感が得られやすい、ということです。
キーの高さとテンポについて
「相手はお年寄りばかりだから」「歌の素人だから」と、低いキー(音の高さ)、ゆっくりとしたテンポで伴奏してしまいがちですが、実はちょっとだけ「相手が無理しないと出ない高さ、歌えないテンポ」にすると、参加した方も「頑張って歌わないと」と奮闘してくれるものです。相手に併せて楽な方へ、楽な方へと流れると、どんどん声が出なくなります。ただ、あまり高すぎたり早すぎて歌えない場合はかえって「難しい」「やはり歌は苦手だ」など、ストレスの原因になることもあるので、臨機応変にお願いします。
対象者が記憶しているメロディ
人間の記憶の何割かはうろおぼえで出来ています(※科学的な根拠無し)、実際に私も現場で楽譜通りではないメロディで歌う参加者とたくさん出会いました。「それは違うメロディです、実際はこうです」と矯正すべきでしょうか?私は相手の歌うメロディを尊重して、追随する立場をとります。音楽教室と違って、あくまで相手が迷いなく歌うことを優先したいと考えます。この考え方には異論もあると思いますが、いかがでしょうか。
伴奏はメロディ優先、リズムは二の次
上記のメロディと同じことなのですが、休符(歌わない時間)も楽譜通りにはいかないこともあります。もし伴奏する方の技術で対応できるのであれば、歌っている人の呼吸やタイミングに合わせて下さい。歌い出すタイミングのキュー出し(合図)を「はい」とか「どうぞ」など、声で行うことも大事です。歌が伴奏にあっていないと「焦り」のもとになって、相手が萎縮する原因になりかねません。
歌と時代の思い出を引き出す
年配の方がその昔、若かった頃や幼かった頃に馴染んだ歌を取り上げる際「どういう思い出がありますか?」とか「その頃何をしていましたか?」など聞いてmいると、それまで口を開かなかった方と会話するきっかけになります。我々も、その歌が流行っていた当時の出来事や文化、流行など知識として持っておくと、良いでしょう。勉強、勉強!女優女優女優!(三田佳子)
歌手っぽく歌う
私はあまり物真似が上手ではないのですが、例えば森進一さんの唄を歌う時は「くしゃみを途中で止めたような顔」で、多少しわがれ声で歌うよう頑張っております。クラシック畑の方、大学で音楽を学んできた人は、どうしても美声で演歌もポップスも歌ってしまいがちですが、ベルカント唱法のぴんからトリオは何だか滑稽だと思いませんか?ねえ‥たまには声質を変えて、その歌手の歌い方に徹してみるのも良いのではないでしょうか。
合いの手を入れる
「お座敷小唄」や「お富さん」など、宴会っぽい歌を生真面目に歌うよりは、合間に「は、どした!」「あ、よいしょ!」など合いの手を入れて盛り上げるのも大事です。中森明菜「デザイアー」で「落ちたら早いよこの世界」「燃えてなくなれあんな店」とバブルっぽい合いの手を入れるのもひとつの手ですが、やりすぎには注意です。
イントロ・間奏・コーダ
歌に導入する直前の伴奏を、歌の最後らへん弾く方法もアリですが、有名な流行歌の場合は原曲の通りのイントロ(前奏)から入るほうが、参加者の記憶を呼び起こすのに有効です。間奏もそうですね。コーダというのは曲のシメですが、3番歌ってバスっと伴奏を切るよりも、ある程度の余韻をコーダでつけるほうが「歌った!」という満足感につながるようです。
台詞付きの唄
「湖畔の宿」「花街の母」「月の法善寺横丁」などが有名ですが、前奏や間奏部分に歌では無く台詞が入っている曲がたくさんあります。私は伴奏しながら台詞をしゃべりますが、紙に書いてノリの良い参加者に担当していただくと、すごく盛り上がります。芸達者な人が数名、必ずいるものです。
浜村淳でございます
マガジンランドという出版社ヵら「ナレーション大全集」という本が出ていて、昔の歌手のリサイタルでよく見られた司会による曲紹介を集めたものなのですが(演歌の花道でも聞くことができますね)、これも前奏の時に語り出すと盛り上がります。
あてふり
歌の歌詞通りにふりつけをつけて、みんなで踊る活動です。これはいつかまとめて記事にしたいと思います。我々の活動では一番人気のコーナーです。
なお、伴奏のコツはこれらの本を参考にしてみてください。
平田紀子のちょっと嬉しい伴奏が弾きたい―『theミュージックセラピー』実践ハンドブック (「theミュージックセラピー」実践ハンドブック)
平田紀子のもっと嬉しい伴奏が弾きたい 歌謡史資料集&全曲伴奏譜 (「theミュージックセラピー」実践ハンドブック)

コメント

  1. よしえ より:

    本日も遠路はるばるありがとうございました。
    そうそう、そうなんだよねと納得のポイントでございます。
    初心忘れず、細く長くいきたいと思っております。

  2. marumaruhitsuji より:

    よしえさま。
    こちらこそ、今日はわざわざお運びいただいてありがとうございました。
    宮古市、まだまだやることたくさんありますね、私も頑張ります。
    これからもどうぞよろしくお願いします。

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